Raw Materials : 陶芸に使われる原料 etc...
メモ。釉薬原料のまとめ。 特徴をまとめてみました。調合などのヒントに。
釉薬(器を彩る色)に使用されている原料を一部紹介。ここでは、釉薬に使用されるもので私が触れたことのある原料を中心にその原料名と特徴などを取り上げてみました。毒物もありますがアトリエで使用している食器用の釉薬は完全に融解し無毒化される範囲での添加量です。また、鉛など現在食器として使うには適さないとされる原料は使用しておりません。作品ご購入のお客様、体験教室等をご利用のお客様は安心して器をご使用ください。私自身も健康は損ないたくありませんので科学組成などを日々研究しております。釉薬の調合はテストテストの繰り返しです。陶器の色は焼成方法、窯の種類、土、釉薬など様々な要因が調和して出来上がっています。100のテストをして1いいのがあればいいほう。趣味で調合されている方も諦めずにトライしてみてください。ちなみに自己研究による解釈に基づいていますので間違っているところもあるかも知れないし嘘かもしれない。という目で見てください。失敗した釉薬を作ってしまったと思ったものがちょっとした気づきで最高の出来になった!なんてことも最近ありました。失敗した釉薬にも最高のヒントが隠れていると思っています。失敗と成功は紙一重といったところなんでしょうね。
*注意…釉薬調合の際、粉末を吸い込まないよう防塵マスクを。焼成時は換気しよう。

Last Update : 2025/4/9
自分が何をやっているのか
すべて自分の中で説明できるように
今さら0から見直してます
釉薬を構成する3つの要素
調合のヒント。釉薬を構成する要素としてシリカ/アルカリ/アルミナこの3要素があります。
原料が上の要素のどれなのか把握する.重複する性質を持つものも多く含まれます。
原料を買ったらとAIに聞くなり事前情報を収集し単味で焼いてみてそれから考えテストを繰り返します。
ある釉薬①=●+●+●+(●+●)
『●+●+●』の部分が釉薬を構成する基本要素でそこに『●』の色を着色するものや『●』の釉薬に
面白みを出すものを加えたりします。マット・結晶・乳濁・透明・失透などの釉調もこの混合比で変化します。
でも、世の中の面白い表情の釉薬はこの限りで作られていなかったりもするので常識外もありだと思います。
●シリカ/SiO2(ガラス質の素)
釉薬を溶かしたいとき → 減らす
釉薬が流れすぎるとき → 増やす
主成分:石英・フリント
釉薬に強度と艶 融点 1723℃
●アルカリ(溶かす)
釉薬を溶かしたいとき → 増やす
釉薬が流れすぎるとき → 減らす
●アルミナAl2O3(土とガラス質の間を繋ぐ)
釉薬を溶かしたいとき → 減らす
釉薬が流れすぎるとき → 増やす
貫入が多いとき → 増やす
調合比 20~30%ぐらいでマット状に
●●福島長石(カリ長石)
溶解温度が高く、単味での焼成では解け方が不完全で透明感があまりない。ペグマタイト長石に分類(マグマが地表に上がってくる際にゆっくりと冷めたため純度が高くなったそう)。現在では取れていないのでインド長石が代わりに?一般的に長石はナトリウム(ソーダ)とカリウムの酸化物を含み、どちらの酸化物が優勢かによって名前が付けられる。
●●釜戸長石(ソーダ長石)
福島長石に比べ融解温度が高い。失透釉や明るい色の釉薬を作るにはソーダ長石は向いていると思うが、反面貫入が入りやすくなり表面が柔らかく傷もつきやすくなる。カリ:ソーダ=4:3 アプライト長石(珪長石)の典型。
●●平津長石(ソーダ長石)
ナトリウム分が多く1,200℃以下からと他の長石に比べよく溶けトロっとした感じに。また、透明度は高い、アプライト長石(マグマが地表に出てきて急速に固まったため結晶が小さくなったもの)。単味で志野釉に。*溶解度=カリ長石<ソーダ長石
●●大平長石(砂婆/藻珪・カリ長石)
風化花崗岩。珪石に近い長石で砂が入っているような感じ。黄瀬戸釉などの長石としてあう。
●●三雲長石(ソーダ長石)
別名山丈長石。鉄分を少し含む。アブライト長石
●●オーストラリア長石(カリ長石)
珪酸分も多く溶けがいい。
●●霞石閃長石(ネフェリン長石)
ソーダ長石の一種。カナダ産。ナトリウム含有量が特に高い(長石が6分子のシリカを含むのに対し、アルミナ1分子、ソーダ1分子に対してシリカ2分子のみ)
●珪石・珪砂
シリカつまりガラス質99%を主成分とする。増やしていくと乳濁化する。また、貫入防止効果も。単味だと殆ど溶けない。
●●天草陶石
アルミナの性質も持つ原料で磁土の元みたいなもの。可塑性あり。アルミナの作用によりマット、白濁感も出る。単味での焼成では白色に焼け生地への定着もいい。素焼き用の化粧土としても使用可。天草陶石を使った焼き物としては有田焼が有名。
●合成藁灰
シリカつまりガラス質を主成分とする。また、珪石に近い性質がある。長石にも似た性質をもつが長石よりも溶け難い。溶解温度が非常に高く単味での焼成ではあまり溶けないものの少しガラス化もする。生地への定着は調合比(70%以上)が上げると釉切れを起こしやすくなる。リン酸分が多いため20~40%で乳濁化。
●天然モミ灰
80%前後のシリカ分を含む。藁灰と似た性質だが比べると溶け難い。単味では殆ど溶けない。黒っぽい色をしている灰。白濁して溶ける卯の斑釉が黒く見えるのはこのため。黒色の釉薬の上に塗り重ねると朝鮮唐津風に。
●ペタライト(リチウム長石)
耐熱食器に。カリ長石。土や釉薬に混ぜて使用すると膨張係数が抑えられる。非常に活性な溶媒剤であるリチウムを含むものがあり、より濃縮された形で炭酸リチウムとしても利用できる。明るい色を強調する作用も確認されたが釉縮みの原因にもなる。10%ぐらいまでか。
●●硼酸(フリット)*TOXIC
シリカやアルカリのような溶解剤の働きをする。貫入を抑え艶を促進。幅広い焼成温度帯で溶ける。鉛の代用としても使えそう。多量に使用すると発泡することも。市販の釉薬によく配合されてそう。
●合成土灰
カルシウムを主成分とする。多少の鉄分あり。単味での焼成は溶けているが粘り気がなく不安定で艶もない。
●天然樫灰
鉄分量小。雑味が少なく澄んだ色に溶ける。標準調合比30%ぐらいか。
●天然松灰(深みを出し淡色に)
炭酸カルシウムを主成分とする。また、アルミナ分も若干含まれる。天然の鉄分(2~3%)などの雑味を多く含む。単味での焼成は雑味である鉄分の影響により若干色味が出る。調合比が増すにつれてマット感が。標準調合比50%ぐらいか。
●天然栗皮灰
鉄分量小(約1%)。雑味が少ないので淡くすっきりした釉調に。ゆえに、織部、青磁などに適しているといわれる。単味でも釉になるが安定性がない。標準調合比30%ぐらいか。
●天然橡灰
雑味成分多。若干、乳濁しマット感あり。
●天然土灰
土灰とは土の灰という意味ではない。雑多な樹木の灰という意味である。単味でも釉になるが安定性がない。調合比50%ぐらいが安定値でそれ以上だと流れやすくなる。鉄分は2~3%。
●天然イス灰
九州南部で採れるイスの木の灰。単味でも釉になるが安定性がない。すっきりした印象の釉に。透明の薬などに。鉄分は少なめ(約1%)。釉が流れにくいので染付けなどに向く。
●天然樫灰
単味では溶けにくい。一般的に硬い木の灰はは単味では溶け難いとされる。若干結晶を伴うのでそば釉の灰としても良さそう。鉄分は2~3%ぐらい。
●籾灰
シリカ・珪酸分を約80%含み、乳濁釉しやすい。籾や糠の灰は草を燃やした灰なので粉末や釉薬のときは黒く見えるが焼成すると白くなる。あなたが通っている教室とかで黒い色をした釉薬なのに白く焼きあがる場合はこの灰が使用されてるかも。
●唐松灰
10%弱の鉄分を含有している様子。単味で焼成するとかなり濃い色調になる。単味でも使用可。
●中仙道灰
10%弱の鉄分を含有している様子。単味で焼成するとかなり濃い色調に。単味でも使用可。
●美濃路灰
単味では溶けない。
●檜灰
単味では溶けない。
●骨灰(こっぱい)
動物の骨の灰で牛骨が多いそう。リン酸カルシウムにより乳濁作用を起こす。少量であれば炭酸カルシウムの代わりに。斑点効果 ボーンチャイナ
●天然ナラ灰
単味では溶けない。鉄分は少なめ。
●炭酸バリウム *TOXIC
溶解力が強く、またアルミナ分も含まれる。量が多くなると気泡が入りやすいが酸化金属などと激しく反応する。単味での焼成では溶けるがガラスのような艶は見られない。釉薬に粘りも加えるので貫入防止効果もある。織部釉に混ぜると鮮やかな青緑に。劇毒物のため食器として使うには配合比15%程度までとされている。また、バリウムマット釉は適切に溶融できているか自分で判断できな方は食器利用は控えた方がいい。個人的にはオブジェ陶以外、通常の食器では使用しない方がいいと思う。現在では取り扱いも厳しく炭酸ストロンチウムへ切り替えていくべきかと。代替品による効果実験も確認済みなので当スタジオでは在庫がなくなり次第、使用しません。
●マグネサイト(白く溶かす)
炭酸マグネシウムを主成分とする。融解温度が高いので単味ではほとんど溶けない。結晶作用により釉薬をマット(5%以上)、乳濁化させる。貫入防止効果あり。添加量が多すぎると白い斑点が出る。*酸化マグネシウム(マグネシアMgO)の代用として:モルが約1/2なのでMgoで同様の効果を狙う場合、マグネサイトを倍入れる。
●炭酸ストロンチウム
辰砂、青磁、アルカリマット釉などで明るくキレイな色を出すために使用される。炭酸バリウムの代用にも使えるが少し効果が落ちる。代用の場合は1.3倍ぐらいか。
●●タルク
マグネシウム・塩化マグネシウム分(ケイ酸塩)を多く含む。マグネシアマットなどに。貫入防止効果あり。
●炭酸リチウム*TOXIC
塩基成分の強力な溶解剤。トルコ青釉などに。結晶作用がありドライ系の釉薬で斑点やほかの表面効果あり。オール電化対応の土鍋に入っている?要研究。
●ドロマイト(炭酸マグネシウムカルシウム)
釉薬の溶解剤(Flux)。マグネシウム・カルシウム(石灰)・炭酸塩を主な構成要素とする。貫入防止効果あり。結晶性マットなどに。例)マグネシア成分がCoOを結晶をともなったラベンダーマットに変化させる。
●硼砂(Borax)
ナトリウムと硼酸の化合物。溶解温度878℃。
●白石灰
CaCO₃ 炭酸カルシウム 焼成中に分解して酸化カルシウム (CaO) となり、溶融助剤としてガラス形成を助ける。生地では耐火度を調整し白化させる。
●鼠石灰
CaCO₃ 炭酸カルシウムを主成分とする。白石灰と比べ不純物を含む。溶解剤として作用しガラス形成を助ける。白濁した質感や微妙な変化を与えるために使用。
●●珪灰石
ケイ酸カルシウム (CaSiO₃) 溶融温度の低下やマット仕上げに。
●石灰石
溶媒材として用いる。炭酸カルシウムや方解石を主成分としている。
●炭酸カルシウム
主な2次溶媒材。カルシウム成分が過剰になると、釉薬がつや消しになることがある。しかし、無光沢のカルシウム釉は、一般的に淡く漂白された色に。
●日本陶料カオリン
磁土に近い性質。単味焼成では粘土に近い性質のため固まるが溶ける様子はない。マット感を加えたいときにも。添加し過ぎると釉が縮む。化粧土で使う場合、長石を微量加えると馴染みが〇。
●ニュージーランドカオリン
純度が高く(鉄分とチタン含有量が低い)、高い透明感と白色度を持つ。
●ブラジルカオリン
鉄分が非常に少なく白色度が高い
●広東カオリン
少し青みがかった白色に
●蛙目粘土
花崗岩類が風化しカオリンを主成分とした土。鉄分などの雑味成分あり。珪石粒を含むので少しザラザラした質感に。可塑性に優れ釉薬や化粧土の食い付きを良くし沈殿防止効果もある。光が当たると蛙の目に見えたことからこの名前がついた。
●大道土
萩焼に使われるざっくりした陶土。細かい砂分と鉄分を含む。
●木節粘土
枯れた草木などの有機物を多く含む。カオリン質で可塑性が非常に優れ粘りがある。また乾燥強度が高い。
●ベントナイト
粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分とする粘土の総称。ベントナイトは非常に可塑性のある粘土で、粘土分が特に少ない釉薬に少量(2~3%)加えられる。また、他の成分を水中に懸濁させる働きがあり、他の成分が水中に沈殿するのを防ぐ。施釉後の釉薬強度(粉になってしまう)のを防ぐ。多すぎると釉が縮れる。
●●● シリカ・アルカリ・アルミナ
簡易的に区分けしてありますが厳密ではありません。詳しくは成分分析表を参照してください。釉薬の基本的な溶解剤は酸化ナトリウムとカリウムを含む長石(ガラスの元にもなる)ですがそれ自体だけだと融点も高く、また、水に溶けて洗い流されてしまう可能性が高いため2次溶剤(炭酸マグネシウム・ストロンチウム・亜鉛など)を入れ安定した釉薬にします。またそのままだと流れやすい状態になってしまうため粘性を高めるために粘土類を追加しているイメージ。ゼーゲル式についてはどういった釉表情を目指すのかを考え、釉調合比のヒントの1つにしている感じです。ex)アルミナ:シリカ 艶1:8 マット(アルミナマット釉 高温焼成してもマットをキープ)1:5 ⇔マグネシウムマット釉(ドロマイトベース落ち着いた色味に)
着色剤
天然灰などに若干の鉄分など含まれ色が着きますが
意図的に色を入れたいとき下の着色金属類を使用することがあります。
*酸化金属類が入ると釉が溶けやすくなる
●酸化鉄・紅柄(黄・黒・青磁)
酸化第二鉄を主成分とする。鉄絵の下絵具にも使用される。高級品だと鉄分の含有量が多い?一般的に鉄分の量が増えると釉が溶けやすくなる。ex)黄瀬戸2~4%/飴釉5~7%/黒釉10%~
●中国黄土
含鉄土石類で鉄分の多い(約19~25%)天然の粘土。アルミナ分も含む。紅柄よりも鉄分は少ない。落ち着いた色調の鉄釉や、生素地用の化粧土、絵の具としても使用。
●黒顔料
金属顔料を溶かし発色させてから粉砕させたもの。安定した色味が得られる。
●鬼板
原石は鬼のように硬いというところから鬼板とついたとか?含鉄土石類で鉄分20~30%を含む。鉄絵の具としても使用。志野や織部の鉄絵はコレが多いのではないでしょうか。素地土に数%混ぜて使用しても面白いかも。
●来待石
島根県で採取される含鉄土石。鉄分約6%を含む。ガラス質で単味で釉になる。1,280℃
●珪酸鉄
紅柄と珪石を1:3で混合し焼成された顔料。
●ニッケル *toxic
緑。マスタード色(マグネシウム釉にチタン)。コバルトと合わせ灰色の釉薬に。亜鉛釉に合わせピンクヤブルーに。0.1-3%
●酸化銅(青/緑/黒/赤/紫)*TOXIC
黒色の粉末。1025℃で揮発し出し1148℃で溶解。そのため不透明釉で覆うと斑点がでることも。マグネシウムベースの釉に入れると緑に、カルシウムやバリウムベースの釉に入れターコイズに(0.5-1%)、酸化錫が組み合わさると淡い青に。タンバン(黄瀬戸の緑色のとこ)にも使われる。この場合、少し灰と混ぜるとなじみがよい。ex)0.5~10% 3~5%で織部 還元で赤
●炭酸銅 *TOXIC
緑色の粉末。酸化銅の代わりに使用する場合は1.4倍で計算すること。添加量が増えてもあまり黒っぽくなならない。
●硫酸銅
鮮やかな青色をしている。黄瀬戸のタンバンに使われる。抜けタンバン(器の反対側に銅が移る)も出やすいらしいけど、高価なため殆ど使用せず酸化銅を代用。
●二酸化マンガン*TOXIC
鉄釉(1-15%)などに。20%以上でメタリック調に。コバルトと合わせると紫に。呉須に少量混ぜると藍色に。1080℃で酸化マンガンになりガスを発生し溶ける。焼成中の煙を吸わないこと。毒性あり。
●酸化クロム*TOXIC
緑色の着色剤。他、赤。茶(亜鉛系釉)、黒などにも発色。0.1-0.5%+酸化錫(5%)と調合すると赤やピンクに。また、発色を濃くするために使用する。ex)アルカリ系釉薬に+でライムグリーン
●加茂川石
約15%の鉄分/マンガンを含む珪石質の含鉄土石。黒楽や天目釉に。単味でも使える。
●酸化コバルト(青系)*TOXIC
発色性が強く安定した金属。還元焼成の方がより青みが強くなる。約1%の添加で海鼠釉ほどの発色に。非常に高価な原料だが鉄釉を作るときなどに若干添加すると深みがでる。ex)0.1%~
●呉須
酸化コバルトを主成分とした染め付けの青顔料。海碧呉須、古代呉須など地方等により様々な種類がある。お茶で粉をあてると呉須よく伸びる。(カテキンが効くらしい)
●酸化ルチール
黄色い粉末。酸化チタンと10%ぐらいまでの酸化鉄を含む。少し結晶を伴う。非常に変化があり渋い。
●黒浜
砂鉄のこと。花崗岩が風化した後に残った砂鉄分で約80%の鉄分を含む。鉄釉やチタン結晶釉などに。
●酸化ニッケル*TOXIC
灰色、青、赤紫、ヒワ色、黒色などに発色。不安定な発色を示し、調合により色々な発色をします。
●益子赤土(益子赤粉)
益子で鉄釉や黒化粧として使われる含鉄土石。珪酸、酸化鉄(約6%)に微量のリン酸を含む。来待石に性質が似ている。そのまま水で溶いて柿釉に。
●イルミナイト
酸化チタンと酸化鉄を約50:50で含む。
●各種顔料
透明釉に入れればとりあえずその色になってしまう便利な顔料。赤や黄・黒は使用するのもありかも。個人的には他の色はつまらないので酸化金属を使ったほうがいいのでは?
添加剤
釉薬に結晶作用など変化を出す
●珪酸ジルコニウム ZeSio4
ジルコン。酸性、強力な乳濁作用あり。融点2550℃。安定した白さ(12.5~15%)を得ることができるが添加しすぎると釉調が単調になる傾向がある。よくペンキのような・・・と形容されてる。焼きがあまいようなときはシリカ分を減らすか1-2%の亜鉛を。
●シリコンカーバイト
部分還元をさせたり釉薬を発泡させる作用がある。Lucie lieの溶岩釉など。
●酸化錫 Sno2
融点1150℃。5-10%ぐらいで乳濁作用あり。揮発性あると思う。近くにマンガンなどガスを出すものがあるとうっすらピンク、還元作用あるかも?ルーシーリーの薄っすらピンクの鉢はこのためと思われる。2~7%ぐらいで貫入防止効果もある。時価で近年とても高価になってしまいこれだ!と思う作品には使いたいけど正直高過ぎて。
●●亜鉛華
強力な溶解作用がありアルカリ土類に似たような働き。明るい発色をする。20%ぐらいの添加で大きな結晶ができる亜鉛マット結晶釉に。徐冷が結晶を育てるポイント。多量に添加するとピンホールを発生させる。RFでは金属の各性質を減少させるため使用するべきではない。
●蛍石
強力な乳濁作用のある蛍石は900℃ぐらいから溶けだし高温になるとフッ素とシリカが反応し発泡すると言われている。また焼成中に生じるフッ素ガスは猛毒なので換気に最大限の注意を払うこと。
●●第三リン酸カルシウム(合成骨灰)
骨灰の合成版。溶解剤、乳濁剤として。単味では殆ど溶けない。
●酸化ルチール
金鉱石と呼ばれる鉄分を含有する天然のチタン鉱物。0.5-15%(産地仕入れ先で所成分の含有バランスが違う)ぐらいまでの鉄分、微量なクロム・バナジウム・ニオブをを含む。よって還元で青み?非常に強い結晶作用が特徴。鉄分の影響により黄味がかる。融解温度を下げる効果も。そば釉で白斑点、縞々を出すときにも。アルミナ分が多い釉で黄色っぽく。2-10%
●酸化チタン
融点1830℃。強力で安定した結晶作用がある。10%ぐらいで乳濁化。少しクリームがかかる。赤土に含まれる鉄分と結合しやすい傾向があるかも。パール状な変化のあるマット感を出したいときに5-10%。過度に添加すると融点が下がり流れやすくなる。
●●骨灰
牛などの動物の骨を焼いたもの。2%~で乳濁化。リン酸カルシウムの結晶が生じる。単味では殆ど溶けない。失透釉、鉄赤、まだら、縞々。
その他
●3号石灰透明釉
日本陶料さんの日本でもっとも基礎釉として使われていると思われる透明釉。SK7(1230℃)で溶け非常に安定した釉薬。これに着色金属などを加えるだけで気軽に色釉など作ることができる。
●カリ石鹸
石膏型を作るときに使用する離型剤。
●シャモット
素焼きを粉砕したもの。急熱急冷に強くなる。耐火度を上げたいときや大物作陶のときの骨材として陶土に混ぜて使用することがある。乾燥時のヒビ割れ防止にも。
●トチ渋
どんぐりのヘタを水で暫く漬け込んだもの。織部釉の酸化皮膜除去に。貫入に黒ずみが入り趣が出ます。
●撥水剤
釉抜きに。揮発性が高い。素焼き生地にも釉掛けを行ったあとにも使用可。一度塗るとその部分には釉が乗らなくなるので注意。誤ってしまった場合は、素焼きであればサンドペーパーで擦ると若干は取り除くことができる。使用した筆が傷みやすいので専用の筆を用意し、食器用洗剤か灯油で使用後の筆をよく洗うこと。
●ラテックス(陶画のり)
簡単に言うとゴムの液体。臭い。撥水剤と違い釉掛け後にはがすことができるので2重掛けなどに向く。木工ボンドがポリッと剥がれるようなイメージ。上の撥水剤と同様に使用した筆が傷みやすいので専用の筆を用意し、食器用洗剤か灯油で使用後の筆をよく洗うこと。
●にがり(塩化マグネシウム)
沈殿防止剤として。長石多めの釉薬だと効果が薄い?
●C.M.C(セロゲン)
合成のり。釉薬や絵の具の接着剤として。釉薬ののりが悪いときなどに。釉はがれの防止には1Lの水に1~2%程度セロゲンを入れ、3日くらい放置しその溶液を5%前後釉薬に加える。
●セラムボンド
素焼き製品の接着剤。粉末に少しづつ水を加えペースト状にし使用する。接着面の片方に塗り圧着。
●水酸化アルミニウム(アルミナ粉)
焼成具である棚板に塗ってあるあの白いもの。融点が2050℃と非常に火に溶け難い性質を持つ。コレに蛙目粘土、木節粘土、カオリンなどを少し混ぜ水に溶いて使用する。作品が棚板と溶着してしまうのを防ぐ。水アルミナは吸着性が高いので棚板の裏側に塗ると良い(剥離して器に落下しずらいため)。
Bisque Firing 700-900℃
573℃まで1時間につき60℃ずつゆっくり温度上昇させる。土の中の結晶石英が約1%まで増加していくため急激な温度上昇は割れの原因となる。また、この温度帯で結晶水が完全に土中から放出されます。そのため350-573℃ぐらいまでは窯の蓋を半開きにしておくといい。573℃を経過後は1時間につき100℃で目的とする素焼き温度まで上昇させる。700-900℃の間で粘土に含まれる有機物や硫黄、フッ素類は消失していく。そのため素焼き焼成過程においてガスが発生しているものと思われる。釉にピンホールが出るときは素焼きの温度を通常よりも上げてあげるのもいいことかも知れない。使用している釉にあまり影響が出ていないようだったら700℃の素焼き温度で充分な気がする。
Firing 1100-1300℃
500℃:陶土や釉中に含まれる炭酸マグネシウムなどの結合した水分が排出される。そのため釉薬の層が剝がれないように当初はゆっくりと温度を上昇させていく。
600-800℃:釉中に含まれるドロマイトや炭酸カルシウムなどの炭酸塩から2酸化炭素が放出される。
900℃:釉薬が溶け始め、陶土と結合しだす。
1000℃:炭化ケイ素が分解しシリカと2酸化炭素を形成、釉薬に気泡やぼこぼこをつくることがある。
1025-1232℃:釉中に酸化銅、マンガン、酸化鉄が含まれる場合、酸素が放出される。この酸素ガスが釉を通して泡となったり融解温度に応じ油滴効果を与えることがある。
Melting Point:土と釉薬が充分作用仕合わせるため最高温度を30分はキープ(釉薬に応じて)。
結晶釉を育てる:冷却に時間をかける 1060℃を数時間キープ
温度降下中に窯を開けるとシリカの2つの異なる相が収縮反転しひび割れを起こすことがある為、100℃以下になってから開ける。
Trouble shooting
●ヒビ・貫入・クラック
貫入の原因は釉薬が冷却中に素地土よりも収縮することで発生する。一般的には多量のナトリウムやカリウムを含むアルカリで発生しやすい。貫入を抑えるには5%ほどのシリカと土分を同量加える。低膨張の力ルシウム性硼酸やタルクはこれらを引き起こす原因となる長石やアルカリ性フリットの代用品として用いることができる。ナトリウムやカリウム長石の代わりにリチウム長石を用いてもいい。
●剥げ落ち
素地に対してあまりにも釉薬が多いとリムや取っ手の角にストレスがかかり剥げ落ちることがある。長石を多くするかシリカ分を減らし膨張係数を増やすことにより改善が見込まれる。
●ピンホールと発泡
釉中から焼成中にガスが抜けることが原因で発生する。最高温度を15~30分とるとガスが釉中からスムーズに抜けやすくなる。炭酸カルシウムは炭酸ガスを発生するため気泡を生じやすい(珪石で代用できるが同時に石英の量を減らすこと)。亜鉛はRF時に気化するのでピンホールを作る原因となる。硫黄分を含む土や釉薬は焼成すると亜硫酸ガスが出るためピンホールを発生させる。素地の表面に穴が残されたまま粘る釉薬を掛けることでもピンホールが発生しやすい。骨灰は発泡の原因となることがあるため釉薬に入れる前にか焼することがある。土の中に空気が残ったまま成形し焼成することでも発生する。
●縮れ・釉飛び・梅花皮
釉の表面張力が強すぎるため釉が玉のように縮れてしまい素地が見えてしまう現象。アルミナ・ジルコン・酸化などがこれらを引き起す場合が多いので問題ならば減らすべき。土や亜鉛、低マグネシウム分は乾燥時に収縮の原因となるので代用としてか焼力オリンを使う。また、釉薬の厚掛けや素焼き素地に埃や油分が付着していると起きる可能性があるので濡れスポンジなどでしっかり除去すること。釉を完全乾燥させてから焼く。釉薬に糊剤やCMCなどを添加する。
Glaze Durability
編集中です。
お洒落なお店で見かけたあの器、!?と思ったのでこの記事をかくことにしました。明らかに金属類が溶けきっていないようなものをかっこいいかも知れないけど器として売っていたので。科学的な分析装置を持っている訳ではないので不確かな点はありますがこれまで色々調べてきた中からオブジェ陶は別ですが自分への戒めとして器の安全性というところの考えを書き留めておきます。
釉薬の耐久性において溶媒材は重要な役割りがあります。安定した溶け具合にするためにいくつかを複合的に使うほうがいいとされています。
Health & Safety
木灰やリチウムのようなアルカリ性の強い物質を釉中に含む場合はゴム手袋などで手を保護し撹拌すること。ホタル石やマンガンは焼成中、有毒ガスを発生するのでよく換気をすること。シリカを含む粉末状の原料を取り扱うときは防塵マスクの着用が望ましい。また、工房内は定期的な雑巾がけを。鉛やバリウムが使用された釉薬は食品中の酸性分が食器表面を分解し重金属部に達するため食器類には適さない場合があります。そのため十分な比率のシリカとアルミナ分を含んだ釉薬で適正焼成することにより耐酸性を得てております。従来、鉛は面白味のある釉調が低火度焼成で得られたため大量生産品や海外生産などの安い食器に使われることがありました。しかしながら、鉛の人体に対する有毒性が広く認識されるようになってから多くの陶芸家は鉛の使用をやめ硼酸などの代用品を使うようになっております。なお、当Studioでは鉛は使用しておりません。器は楽しく安全に作って使って健康第一!
*Highly toxic
・鉛・バリウム・赤/オレンジ/黄色などの顔料・三酸化アンチモン・五酸化バナジウム・酸化ニッケル・酸化クローム・マンガン
*Toxic
・酸化コバルト・銅・リチウム・硼酸・亜鉛